日本の教育現場では、端末の「1人1台」が当たり前となりつつある。
一方、いち早くデジタル化を推し進めてきた米国ではいま、デジタル機器からの脱却が本格化しているという。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が報じた。 生徒からノートパソコンを回収 カンザス州マクファーソン郡にあるマクファーソン中学校の校長、インゲ・エスピング(43)は長年、子供たちの集中を妨げるデジタル機器との戦いに明け暮れてきた。 彼女の学校では、4年前に授業中の携帯電話の使用を禁止した。
しかし、デジタル機器による生徒たちの集中力低下は止まらなかった。
多くの生徒が、学校から支給されたノートパソコン「クロームブック」でYouTubeの動画を視聴したり、ゲームに興じたりしていたからだ。
なかには、学校のGoogleメールのアカウントを使って同級生をいじめる者もいた。 2025年12月、同校は全校生徒480人に対し、授業や自宅で自由に使わせていたクロームブックの返却を求めた。
現在、このデバイスは教室のカートに保管されている。
生徒たちは手書きでノートを取り、クロームブックは教師が指定した特定の活動で限定的に使用されるだけだ。 「クロームブックがあれほど大きな学習の妨げになっている状態を、そのままにしてはおけないと感じたのです」。
カンザス州の2025年度最優秀中学校長に選ばれたエスピングはそう語る。 「このテクノロジーはひとつのツールにはなり得ますが、教育における『正解』ではありません」 現在、マクファーソン中学では教室のカートの中にクロームブックが保管されている Photo: David Robert Elliott / The New York Times 学校は「生涯の顧客」獲得の場 マクファーソン中学校は、教育現場に広がるテクノロジーへの反発、いわゆる「クロームブック離れ」の最前線に立っている。
全米の学校で圧倒的なシェアを誇るこのデバイスからの脱却という、象徴的な動きだ。 長年、AppleやGoogle、Microsoftといった巨大企業は、子供たちを生涯の顧客として囲い込もうと、熾烈なシェア争いを繰り広げてきた。
10年以上にわたり、テック企業は生徒1人につき1台のパソコン購入を学校に促してきたうえ、それらの機器が教育を民主化し、学習効果を高めると主張してきた。 現在では、GoogleやMicrosoft、さらにOpenAIといった新興勢力が、自社のAIチャットボットを教育現場に普及させようとしのぎを削っている。 しかし、これらのデジタル機器や学習用アプリに数百億ドルもの予算が投じられたにもかかわらず、複数の研究から、
こうしたデジタルツールが生徒の学力向上や卒業率の改善に寄与していないことが明らかになっている。
それどころか、テクノロジーへの過度な依存が生徒の集中力を削ぎ、学習を妨げる可能性があると警鐘を鳴らす研究者もいる。 世界的な潮流 ノースカロライナ、バージニア、メリーランド、ミシガンの各州では、かつて生徒全員にデジタル機器を配布していた。
だがいま、これらの州では、学校側が教室での過度なテクノロジー利用を見直しはじめている。 教室でのデバイス利用の縮小は、テック大手とその製品が、子供時代や思春期、
そして教育に与える影響について、世界的に根本的な見直しが進んでいることを示す最新の兆候といえる。 3月下旬には、ロサンゼルスの州裁判所の陪審員がMetaとYouTubeに対し、未成年者を自らのプラットフォームに依存させ、害を及ぼした責任を認めた。 現在、全米30以上の州では、生徒による学校での携帯電話の使用が制限、または禁止されている。
2025年には、オーストラリアがソーシャルメディア企業に対し、16歳未満の子供のアカウントを無効化することを義務付けた。
この動きは他国でも検討されている。 冒頭のマクファーソン中学校のような学校は、単に生徒のスクリーンタイムを減らすためだけにデジタル機器の使用を制限しているのではない。
教師たちは、子供の発達、生徒と教師の交流、そして昔ながらの学びに焦点を戻すことを目指している。 「あの子たち、またダーツの作り方を覚えたんですよ!」校長のエスピングはそう言って、廊下の天井に突き刺さった生徒お手製のダーツを指差した。 「子供たちは、昔ながらの『やんちゃな中学生』に戻りつつあります」
日本の教育現場では、端末の「1人1台」が当たり前となりつつある。
一方、いち早くデジタル化を推し進めてきた米国ではいま、デジタル機器からの脱却が本格化しているという。
米紙「ニューヨーク・タイムズ」が報じた。
生徒からノートパソコンを回収
カンザス州マクファーソン郡にあるマクファーソン中学校の校長、
インゲ・エスピング(43)は長年、子供たちの集中を妨げるデジタル機器との戦いに明け暮れてきた。

 ■ 捨てられ始めたタブレット学習